|
|
|
ご無沙汰してます。
きょうメールしたのは、岩下さんが最近始められた「"この世で最もつまらない音楽"展」というものが
私にはまったく理解できず、どうしてもお伺いしたかったためです。
音楽って、言葉で説明するべきものではないかもしれませんが、
岩下さんはどんなことを思ってあれを製作されたのか、
もし良かったら教えていただけないでしょうか?
p.s. アルバム作り頑張って下さい。
|
|
|
|
2003年 8月 25日 (月)
HAMさんからのお便り |
|
|
|
お返事。 |
|
|
|
お便りありがとうございます。
MBM展("この世で最もつまらない音楽"展)は、
確かに納得しづらいかもしれませんね。
僕が自分の作曲に対して自暴自棄になってしまったのではないか、とか
逃避的に実験音楽に没頭してしまっているのではないか、とか
そういうマイナスな想像力がはたらく人も多いかもしれないし、
(僕はその辺に対しては否定も肯定もしませんが。)
そのためにまるで自分の音楽観念を真っ向から否定されたような気がして
凄く不愉快になる方もいらっしゃるかもわかりません。
そういう意味で、僕の作曲の中ではこれまでで最もラディカルな創作であり、
コンセプチュアルに対する挑戦はこれで一応の決着がついたという事になります。
なにせ「この世で最も」ですので。
藝術としての「音楽とは何か」という問いに対して、
旋律や和声の束縛を超えた所に存在する「音そのもの」からの表現というものが、
現代音楽として生まれました。
ピッチを巧みに操作し、クレッシェンドや転調で感動を呼び起こす、という方法論はすでに過去のものであり、
それら既存概念からのバリエーションをこれ以上増やす行為は無意味であるから、
音楽表現のまったく新しい可能性を見い出そう、という試みが行われています。
もちろん、この考え方そのものが絶対的に正しいと言える理由はないのですが、
僕自身もWEB等のビジュアルな創作活動から戻って改めて音楽に向き合ったとき
「そういう音楽もあり得るんだな」と言う事を発見する機会がありました。
そして、「バックグラウンド・ミュージック」や「ピクトグラム1」が生まれました。
そのような流れの中にあるのがMBM展です。
僕がここでフォーカスしたかったのは、
音楽を聴く時「つまらない」とか「支持したくない」と思う瞬間の想像力の形でした。
私はここに「この世で最もつまらない音楽」を展示する。
私は「最もつまらない音楽」であることを理解してほしいために展示するのであるから、
あなたがこの音楽を「非常につまらない」とか「まったく関心が持てない」と感じるのであれば
それは展覧会にとっての「良い評価」であり、
その「良い評価」をすることを拒みたいのであれば、この展覧会を誉めなければならない。
そんな、とんち話のような仕組みになっています。
現在の所、MBM展は、そういう意味において「非常に高い評価」を得ています。
反対の意味において非常に高い評価を得る事があるかどうかはわかりませんが、
僕としては、興味を持たれた方にはできるだけ、この「頭の体操」に参加してもらえればと思っています。
…という辺りでどうでしょうか。
もちろん、言葉で説明するとすればこのようになる、という程度ですので、
まったく違う解釈がしうるのであれば、僕に教えてほしいと思います。
ではまた。
|
|
|
|
2003年 8月26日 (火)
岩下倫太郎 |
|
|
|
|